【映画『ルドルフとイッパイアッテナ』】たくましすぎる野良猫たちをコミカルに描く!人間の都合で猫を捨てる人への皮肉もたっぷりと

こんにちは! モリスギ!編集部のナナです。

今回のにゃんこのおすすめは、映画『ルドルフとイッパイアッテナ』です。

にゃんこ
にゃんこ
おもしろいねこたちがいっぱい出てくるアニメにゃ!
子育てにも役立つ映画だったな
編集部ナナ
編集部ナナ

飼いねこの黒ねこ・ルドルフが岐阜のおうちから飛び出して長距離トラックの荷台に飛び乗ったことから大東京に来てしまい、奇しくもノラねことして生活することに。ノラのボスねこ・イッパイアッテナと出会い、好奇心をもって学びたくましく生きていくストーリーです。

超人気児童文学作品の映画化は、台湾、フランスをはじめとする外国でも上映されるほどに。

さらには、主役の黒ねこ・ルドルフは生まれ育った岐阜市の住民として籍を置くなど、多方面で話題となりました。

しかし、インターネットのレビューをのぞくと厳しい批判の声が多数ある作品でもあるんです。

猫映画でいろいろな意見が出るということは、考えさせられる描写、表現があるということ。

では、映画『ルドルフとイッパイアッテナ』の魅力を掘り下げていきましょう!

映画『ルドルフとイッパイアッテナ』はどんな作品?

映画『ルドルフとイッパイアッテナ』は、2016年8月6日に公開された劇場用作品です。

原作は、斉藤洋さんによる児童文学作品『ルドルフとイッパイアッテナ』『ルドルフともだちひとりだち』(講談社文庫刊)。

1987年に刊行されるやいなや徐々に人気を集め、累計100万部を超えるロングセラーに。子どもだけでなく大人も学びの多い良作です。

原作のあとがきが、とてもユニークなんですよ。どこかのノラねこが原作者・斉藤さんの家の前に原稿を置いていったんだとか。

斉藤さんの手腕によってこうやって本になり、青少年読書感想文全国コンクール課題図書にもなったり、第27回講談社児童文学新人賞を受賞も!さらには映画化までされるだなんて、そのノラねこは思いもよらなかったことでしょう!

映画の見どころは、日米屈指のクリエイターが集結して完成させた本格的な3DCGアニメーション。登場する猫たちの毛並み1本1本がとても繊細に表現されていて、なでた手触りが想像できるほどのクオリティ。

美術もまるで写真のような美しさです。

最高峰のCG技術を駆使した作品にしあげた監督のひとりが、湯山邦彦さん映画『ポケットモンスター』シリーズを19年に渡り指揮をとった大ベテランです。

もうひとりが、80ヶ国以上で放送された3DCGアニメ『パックワールド』のヒットメーカー、ロサンジェルスを活動拠点とする榊原幹典さん。

アニメーション制作を手掛けたのは、Sprite Animetion Studios(ロサンジェルス拠点)とOLM Digital 。ハイクオリティな3DCGアニメーションを国境を越えて作り上げた大作と言えます。

声優陣も著名俳優が起用され、話題になりました。

主役のルドルフは井上真央さん、イッパイアッテナは鈴木亮平さんが担当。ルドルフは少年のようなかわいさ、イッパイアッテナは渋いイケボイス。お二人とも普段の俳優スタイルとはまた全然違う声色を披露し、とても新鮮なキャラクターなんですよ。

ーぼくらは それでも 前を向くー

大好きなリエちゃんから愛情をたっぷり受けて岐阜県で暮らしていた黒猫のルドルフ。ある日ひょんなことから長距離トラックの荷台に迷い込んでしまい、気づいたら大都会・東京に。そこで出会ったのは、なんと人間の文字を理解するボス猫・イッパイアッテナ。自分が住んでいた場所がわからないルドルフは、イッパイアッテナから故郷には帰れないことを教えられる。そして、ルドルフのノラ猫ライフが始まる…。はたして、ルドルフは大好きなリエちゃんの元に帰れるのか…私たちの近くでたくましく生きるノラ猫たちの大冒険が始まる!!
※文章引用:映画『ルドルフとイッパイアッテナ』より

観終わった個人的な感想としては以下の通り。

  • 猫と同じ目線で見ると「体当たりでぶつかる人間関係はとても素敵。学ぶことは人生を豊かにしてくれる!」
  • ペットの猫目線で見ると「猫を家族に迎えいれておきながら、人間って勝手でサイテー」

全体的にいい作品です。しかしモヤモヤが拭いきれないのも事実。きっと動物を飼うことに対して、人間の勝手な部分をまざまざと見せつけられてしまったからかもしれません。

※以降、ネタバレを含む感想が続きます。ご注意ください。

登場する猫や犬たちがかわいい!中身の人間味にひかれる

今作品の魅力は、なんといってもねこたちのキャラクターでしょう。

黒ねこのルドルフ。持ち前の冒険心で家を飛び出したら、岐阜から東京に大移動してしまいいきなりのノラねこ生活に。お調子者の面があるものの、目の前の人に喜んでもらいたいという気持ちが強くて、出会うねこたちに慕われる存在に。

飼い主であるリエちゃんを思い出してポロポロ涙を流して泣く姿には、ついつい情が移って。「リエちゃんのおうち、「なんで窓が開いていて玄関ポーチも開けっ放しにしてるのよ!」と文句のひとつも言いたくなってしまいます。

無邪気なルドルフのノラライフを支えるのが、トラねこのイッパイアッテナ

なぜか元飼い主からひらがなから漢字に至るまで文字を教わったイッパイアッテナは、ノラねことして人間と適度な距離感をもって付き合っています。愛嬌をふりまき人間に助けを求めながら強かに生き抜く姿は、ルドルフだけでなく、観ている人たちにも多くの気づきを与えてくれます。

「生きるためには、教養が大事なんだ」とルドルフにしつこく伝えるイッパイアッテナ。そして、強面な姿からは想像できないほどの仲間思い。危険をおかしてまでライバルに対峙する勇気には涙しますよ。

商店街の金物屋で飼われているねこ・ブッチー。江戸川区北小岩エリアきってのお調子者のオスねこ。
ちょっとしたことでもしあわせを感じ、毎日をのんきで気楽に生きる姿には、思わずクスっと笑ってしまいます。

単なる八方美人かと思いきや、いざというときにルドルフやイッパイアッテナに全面協力する頼れるムードメーカーです。

個性ゆたかなねこたちに、思わず人間の姿をあわせてしまうのは、ねこも人間と同じように一生懸命に生きようとしているから。

そして、彼らの共通点は飼いねこ経験があること。その視点で映画を観ると、ねこたちの達観性に飼う人間側が教わることがたくさんあります。

ねこは、人間を癒やしてくれる「かわいい」だけの存在ではないですからね。

やりたいことがあるなら知らない世界をすすんで学ぶ。好奇心をもって勉強する楽しさを教えてくれる

快適飼いねこライフから、ひょんなことで全然知らない土地のノラねこになってしまったルドルフ。

寂しくて不安でたまりません。やっとのことで魚屋さんからししゃもを盗むと、偶然出会ったイッパイアッテナに声をかけられ交流がはじまります。

イッパイアッテナは、元飼いねこ。元飼い主から一方的に文字を教わったおかげで、文字をはじめ生きるための教養を独自に身につけたねこなのでした。

「三丁目から来たんだ」というルドルフに、日本の何県の何市のどこの三丁目なのかと詰め寄ります。何も知らないルドルフは絶望に打ちひしがれます。

でも、イッパイアッテナは「教養があれば、生きていける」と励まし、ルドルフに文字を教えることからはじめるのです。

教えてやってもいいが、約束できるか
絶対に途中で投げ出したりしないって

ちょっと興味あるから位の生半可の気持ちじゃ、イッパイアッテナも教えられません。学ぶことは長期戦と知っているからこその覚悟を問う言葉ですね。

飼い主のリエちゃんの元に帰りたいという目的のあるルドルフ。それはそれは真剣に学ぶのです。

そして、ノラとして生きていくには強かさも必要。人間社会にほどよく頼る術をイッパイアッテナから教わり、心身ともにたくましくなっていきます。

ノラってなあ、じっとしてちゃ生けていけねえんだよ

野良猫は人間とうまく付き合わなけりゃ
うまいもんのひとつも食いやしないんだ

イッパイアッテナの言葉。ぺらぺらの上澄みの言葉ではありません。自分の力で生き抜いて教養を身につけてきたからこその説得力に満ちています。

ぐっときたシーンがこれ。ノラライフに慣れが出てきた頃ちょっと調子に乗って挑発的な言葉を放ったルドルフを、イッパイアッテナが本気で叱ります。

脅し文句ってのは軽はずみで口に出して言うもんじゃねえ
命をかけて本気で言うもんだ

常に危険と隣り合わせのノラ生活。ちょっとした気のゆるみが命に関わることをルドルフに知ってもらいたいからこそ見せた心意気がとてもかっこいいです。

学ぶ楽しさとおもしろさ。そしてやりたいことを達成するためだけでなく命を守るためにも教養が必要なこと。

大切な仲間だからこそまっすぐに伝え、素直に受け止めるといった友情に胸を打たれます。

実社会のねこ世界にもこんな友情があるのでしょうか。そんなふうに想像するのもまた、楽しみのひとつです。

飼い主の顔が映されない違和感。飼い猫を捨てる人間をさりげなく批判している?

映画『ルドルフとイッパイアッテナ』は全編通してかわいらしく学びのあるストーリーです。ノラねこたちに寄り添う人たちの優しさにもふれられます。

でも、妙な違和感が残るのですね。それはなぜだろうと思い返すと。飼い主2人の顔が思い出せないのです。

ルドルフの飼い主である三丁目のリエちゃんとそのおかあさん。イッパイアッテナの飼い主、アメリカで成功した後日本に帰ってきた日野さん。2匹のねこに関わる人物でありながら、映るのは後ろ姿と声のみ。顔の表情はいっさいわかりません。なんとも不気味なオーラを放っていました。

そして、映画の批判が集中しているのがこの二人の飼い主なのです。

三丁目のリエちゃん。ルドルフが失踪して1年、ルドルフによく似た弟ねこを「ルドルフ」と名付けて新しい家族として迎い入れます。

しかし、家の事情でペットとして飼えるのは1匹のみ。おそらくルドルフが帰ってくるのをずっと待っていたにちがいありません。

時が流れ、ルドルフは亡くなったか帰ってこないとあきらめたのでしょう。よく似た代わりの新しいねこに「ルドルフ」の名をつけたことから、元のルドルフと同一化していると想像します。

ルドルフはとても傷ついたことでしょう。自分の代わりとして同じ名前で可愛がられているねこがいるなんて。

でも時間が経過したのだから仕方がないと、教養がついて理解力のあるルドルフ。観ているほうは悲しくて悔しくてたまりません。

とはいえ、こういう話はよくあるケースなのかもしれないと思ってしまいますね。

そして、イッパイアッテナの飼い主、日野さん。

日野さんの元ではタイガーと呼ばれていたイッパイアッテナ。住む家が壊されることになり「一緒に住めなくなった、おれはアメリカにひとりで行き、おまえもひとりで生きていくんだ」と突然言われます。

おそらく、日野さんははじめからアメリカで起業チャレンジする予定だったのでしょう。だから日本を経つ随分前からタイガーに文字を一方的に教えます。ノラとして生きていけるように。

ひどい話です。家族同然のタイガーを、引き取り手も探さずひとりで生きていけだなんて、とても無責任。

のちに、文字が読めることは日野さんのおかげだとイッパイアッテナは感謝こそしていますが、これも人間の勝手な都合ですよね。

一度動物を飼うと決めたのなら、最期まで面倒をみるのが飼う側の責任。でもリエちゃん家族や日野さんのような人たちは実際は多いのではないでしょうか。

一見いい人そうに見えます。でも、本当にねこのしあわせを願っているのでしょうか。いや、自己満足だけで飼っているのではないのか?

「これからペットを飼おうとしているあなた。最期までねこの人生に責任を持つ覚悟はできますか?」

飼い主の顔を見せないのは、誰の顔にでも当てはまるようにする制作側のメッセージなのではないかと感じました。

映画『ルドルフとイッパイアッテナ』まとめ

映画『ルドルフとイッパイアッテナ』をご紹介しました。

突然ノラねこになったルドルフの大冒険を通じた成長ストーリー。
知らない世界を学ぶ楽しみ、仲間を大切に思うこと、人に助けを求めること。

ねこたちが身をもって教えてくれます。

反対に、ルドルフやイッパイアッテナの境遇を考えると飼い主への憤りがわいてくる作品でもあります。

でも、これが日本で起きている事実でもあるんですよね。

子どもたちと鑑賞するときは、ねこを飼うときはどんなことに気をつければいけないのか、実際にねこたちの置かれている背景も合わせて感想をシェアし合えると、さらに深みの増す作品になるのではと思います。

そして、原作はいわずと知れた普及の名作です。

数ある名セリフを2つ抜粋してこの記事を締めます。

映画も原作本もぜひ楽しんでくださいね!

「おまえは、いつでも明るくって、ほかのやつをおしのけて、自分だけいい思いをしようってところがぜんぜんない。おまえといっしょにいると、心があらわれるような気持ちがするぜ。」
※文章引用:小説『ルドルフとイッパイアッテナ』p204より

飼いねこだからって、べつに人間の子分ってわけじゃないってことは、なんとなくわかってきた。それでも、ノラねこのほこりっていうのも、あるような気がするし……。
とうぶんは、日野さんのうちにとまったり、神社のえんの下にねたりするつもりだ。そうしながら、飼いねことか、ノラねことかっていう問題について、ゆっくり考えてみようと思う。
※文章引用:小説『ルドルフ ともだち ひとりだち』p216

映画『ルドルフとイッパイアッテナ』公式サイト

※動画配信サイト
AmazonPrimeVideo、Hulu(会員のみ無料視聴可能)
YouTube、GooglePlay他(レンタル可能)

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