【感想】映画『461個のおべんとう』自由奔放な父が高校生の息子のためにつくり続けたお弁当エピソードが泣ける

こんにちは!モリスギ!編集部のナナです。

今回は、お弁当にちなんだ映画をご紹介します。

前回紹介したのは、映画「今日も嫌がらせ弁当」。

芳根京子さん演じる反抗期真っ盛りの女子高生の娘に、篠原涼子さん演じる肝っ玉かあさんが毎日のお弁当を凝ったキャラ弁で“嫌がらせ”をするといった泣き笑いの要素たっぷりの作品です。

毎日のお弁当づくりを通じて、母娘の絆が伝わってくる。普遍的なテーマだからこそ、胸を打つものがありました。

今回紹介する映画『461個のおべんとう』は、15歳という多感な時期に離婚した、ミュージシャンの父親と繊細な高校生の息子のお話。

井ノ原快彦さんと道枝駿佑さん(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)が親子としてタッグを組むのも見どころ。なんたってジャニーズ事務所の先輩後輩という関係ですから。

親子をつなぐおべんとう。映画『461個のおべんとう』の魅力を語っていきましょう。

映画『461個のおべんとう』はどんな作品?


映画『461個のおべんとう』は、2020年11月6日に公開された劇場用映像作品です。

原作は、渡辺俊美さんのエッセイ『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』(マガジンハウス刊)。 シングルファザーになった父親が高校生の息子のために毎日つくる弁当が461食紹介されています。

渡辺俊美さんは、ミュージシャン。「TOKYO No.1 SOUL SET」のメンバーであり、個人活動もされています。音楽家として本作の音楽や主題歌、劇中歌なども担当し映画づくりにも濃く参加しているのがおもしろいところ。

エッセイには、とある日のお弁当の写真とともに慣れないお弁当づくりと息子への思いが淡々と綴られています。

テクニックでなく、親としての愛情にあふれた本に

  • 料理本で泣いたのは初めて
  • 親子の友情が感動的

など、大きな反響を呼びました。

担当プロデューサーは、エッセイ『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』を読み終えてすぐに企画書を書き上げたという力の入り具合。

“いいものをつくって観る人に届けたい”というクリエイター側の気持ちが、今作のお弁当づくりにも通じるものを感じます。

主演は、井ノ原快彦さん。ミュージシャンという華やかな職に就きながら、ひとり息子にやさしい眼差しを注ぎ続ける鈴本一樹を演じました。

実生活も2児のパパであるイノッチ。高校生の息子を持つ親となるとまだ未経験です。しかし、ジャニーズ事務所で普段から親子ほどの年の差のある後輩たちを日々やさしく見守る姿そのものでした。

とても自然な演技で、鈴本一樹はイノッチなのでは?と錯覚するほど。

そして、一樹の息子・鈴本虹輝(こうき)役には、なにわ男子/ジャニーズJr.の道枝駿佑さん。実年齢も18歳(2021年6月現在)という等身大の役柄。アグレッシッブな両親とは正反対な内気で繊細な性格の虹輝。優しすぎるがゆえの親に気を遣ってしまう演技は、やわらかくてこわれてしまいそうで胸を打ちます。

二人は共演が決まると、先輩後輩の垣根を越えて“タメ口なし”で交流していたそうですよ。本当の親子のようにやりとりしたのだとか。

その二人の自然な掛け合いもまた、映画の魅力のひとつです。

お弁当をつくり続ける意味とは。映画『461個のおべんとう』が教えてくれる、親子にとって大事な3つのこと

 

映画『461個のおべんとう』の世界観をより深く楽しむには、エッセイ『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』を一度でもいいので読むのがおすすめです。

なぜなら、鈴本家定番であるお弁当おかずの「えびと3色ピーマンの炒めもの」がなぜ入っているのかなど、おかずや弁当箱へのエピソードも合わせてわかるから。

おかず一つひとつとってみても、親子が育んできたものがにじみ出ているってとても素敵だなと思います。

この章では、お弁当が教えてくれる親子にとって大切なもの3つについて、ぎゅっと凝縮してお届けしていきますね。

親子の約束。一度決めたことはやり通す。

シングルファーザーになった鈴本一樹。1年遅れで高校生活がはじまった虹輝にお昼ごはんはどうするの?と聞きます。

虹輝はちょっと考えて「おとうさんの弁当がいい」との言葉を。

映画を見ているほうは、自由気ままに生きている父への宣戦布告ともとらえられるんですね。息子としては、「いつもノリでなんでもはじめるから、調子いいのははじめだけ。きっと途中でやめる」と予想。

「よし、わかった。毎日つくる。そのかわり、お前も毎日休まず高校へ行け」

虹輝の思惑通りの答えが一樹からこぼれます。

ここで、3年間に渡る男の約束が交わされることになるのです。

一樹は、約束通り学校のある日は弁当をつくり続けます。

 

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一度、ライブ後に夜通し打ち上げをして朝帰りをしたとき、弁当がつくれるか否かピンチになったときがあります。

焦ってお弁当づくりをはじめる一樹の様子がおかしくてたまりません・・・!

彩りを重要視する一樹のお弁当、ぜひ本編で見てみてください。必見ですよ。突発的に浮かんだ斬新なアイデアに、思わずマネしたくなったお弁当でした!

編集部ナナ
編集部ナナ
思わず大笑い!

そして、朝帰りにも関わらずお弁当をつくってくれる一樹の姿勢に、虹輝は複雑な気持ちになります。

一樹はどんなに忙しくても男の約束を守りたいのですね。「お昼ごはんには、おとうさんがつくるお弁当が食べたい」。あの日交わした約束を守って息子の願いに毎日こたえようと一生懸命になりたいんです。

それが、親が高校生の息子に寄り添えることの数少ないうちのひとつだと自覚しているからなんですよね。

「息子のちからになりたい」

どんなときもこの思いを原動力にして毎朝キッチンに立つ一樹の姿に、親として学ぶことがあります。

親子それぞれの生活がある。必要以上に干渉しない

「父さんの楽しいことが、他の人の楽しいことと思わないで」

ミュージシャンでやりたいことはどんどんチャレンジする、自由奔放な父親・一樹。

 

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食材買い出し中にご近所さんとのやりとりを通して、旬のものを食べさせてやりたいと、ある日そら豆をいれたカラフルなお弁当をつくりました。

でもごはんがしっかり冷めていなかったのか、蒸れてしまったお弁当。蓋をあけると、強烈なにおいが教室に充満・・・!

「だれの足のにおいだよ!(爆笑)」。

クラスメイトがざわつく中、虹輝は恥ずかしくて恥ずかしくてたまりません。

「そら豆はもういれないでって何度も言ったでしょ!」家に帰り、一樹に詰めよります。

一方、弁当箱をあけた一樹は、まるで強烈な足の蒸れたようなにおいに大爆笑です。

そんな一樹の姿を見て、虹輝は冒頭の一言を放つのですね。

一樹は虹輝には虹輝の人生を進んでほしいと願ってはいるものの、自分の価値観を押し付けていたのかもと反省します。

虹輝は虹輝で、ミュージシャンである前向きな父親と無意識に比べてしまい、なぜ自分はこんなに内気でネガティブなのかと苦しみます。

そら豆弁当が、虹輝の本音を一樹にぶつけるきっかけになってよかったなと思ったシーンでした。

また「お弁当づくり毎日大変でしょ、やめてもいいよ」という虹輝に、一樹は信念を持ち続けます。

最低限守るルールを課して、ゲームのようにクリアしていくことを決めたのです。

お弁当三カ条
1.調理の時間は40分以内
2.一食にかける予算は300円以内
3.おかずは材料からつくる

そのために、焼き魚用の切り身や野菜をカットして一つひとつラップにくるんで、冷凍庫に整理します。息子のためでもあり、自分のためでもあるんですよね。

道具をそろえ、地方で調味料を含むおいしいものを見つけると弁当用に買って、調理体制・環境を万全にするのも、続けるためのひとつの工夫。

編集部ナナ
編集部ナナ
やり切るために習慣化したのがすごい

息子がなんと言おうと、やり切る。息子も親にまかせる。

やりたいことを干渉しすぎず見守る親子関係は、お互いを信頼している証。親子の絆のヒントがここにありました。

手づくり弁当以外の食から経験するものもたくさんある。子離れするのも愛情

高校卒業式の日には、一樹の手づくり弁当の集大成、曲げわっぱ三段弁当。

おかずは満載でひとりでは食べきれないけれど、毎日コンビニ弁当や購買のパンで昼食を済ます親友たちとおかずを分け合うのも楽しいひととき。

こんなふうに、一樹のお弁当は高校のクラスメイトと仲良くなるきっかけをつくった大切なもの。

友情というかけがえのないものも繋いでくれたのです。

一樹の手づくり弁当が大好きな虹輝は、「大学に行ってもお弁当つくってよ」と一樹に言います。

しかし、一樹は「学食で食え。そういう時間も大事だぞ」と弁当づくりを断るのです。

「それもそっか」と清々しい表情で笑う虹輝には、残念に思う気持ちはみじんも感じられません。だって家では変わらず、手づくりごはんが食べられるのだから。

一樹は、弁当づくりが嫌になったのではありません。

好きなことを全力でやってこれたのは、家族や仕事仲間など支えてくれた人たちがいたから。自分のように関わってくれる人たちとの関係性を深めていく大切さを教えたかったのですね。

高校生活を送る息子の胃袋を支える自分の役割は終わり。思い切って子離れする大切さをも、教えてくれました。

エッセイには渡辺俊美さんと息子・登生(とうい)さんによるあとがきが書かれているのですが、深まった親子の絆に胸がいっぱいになるんです。

 高校が終わり、お父さんの弁当を食べる機会も少なくなるのかな、と思うと少し淋しいですが、たまには作ってもらえると嬉しいです。
 そして、もし僕に子供があできた時には、おいしくて優しい弁当の作り方をぜひ教えてください。
※文章引用:エッセイ『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』p179より

何度も言いますがエッセイを読むとさらに深みのある作品になります。ぜひ読んでみてくださいね。

まとめ

これは毎日のおべんとうについての話だ
それ以上でもそれ以下でもない

毎日のお弁当を通じて、父はさらに子を思い、子は父の思いを感じ、絆を深めていきます。

食べてくれる人の顔を思い浮かべて、毎朝せっせと準備し、「今日も楽しい日にね!」と弁当に思いを込めて送りだすルーティンが、どれほどかけがえのない時間なのかと思い知らされます。

毎日の積み重ねは目に見えずとてつもなく地味です。でも確かなことは、愛情と信頼が自然とたまっていくということ。

いろんな物食べるってことは、そんだけ世界が広がるってこと
食べるってことは大事
毎日きっちりなるべく満足できるように食べっごと
そしたらなんでもうまくいぐじゃない

一樹の母親が、息子のために毎日弁当をつくることに対してこんなエールを送っていました。

「だいじょうぶ なんでもうまくいくよ」

毎日おいしいごはんでおなかを満たすことは、前を向いて歩いていくことにつながっているのかもしれないですね。

とてもあたたかい心地になれる映画です。ぜひご覧くださいね!そして、誰かのために(自分のためでもOK)お弁当をつくってみませんか?

 

映画『461個のおべんとう』公式サイト

書籍『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』
(リンクはAmazonへ)

※鈴本一樹の弁当だけをアップするInstagramアカウント
@suzumoto_kazuki
お弁当づくりの参考になりますよ!

※篠原涼子さん×芳根京子さんが母娘を演じたお弁当映画『今日も嫌がらせ弁当』レビューはこちら

【感想】映画『今日も嫌がらせ弁当』の魅力を全力レビュー。こどもの反抗期を乗り切るヒントが詰まった良作



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