【映画『犬部!』】「犬猫殺処分ゼロの社会をめざす」学生の行動から、私たちが意識しなければいけないこと【林遣都主演映画】

こんにちは! モリスギ!編集部のナナです。

今回紹介する【にゃんこのおすすめ】は、映画『犬部!』。2021年に公開された劇場用作品です

にゃんこ
にゃんこ
猫部!じゃないのかにゃ?

犬も、猫も、鳥も、たくさんの動物が出てきたよ!
編集部ナナ
編集部ナナ

北里大学の獣医学部での実話を元につくられた、犬猫の命を助けたいと一途に行動する青年たちの青春ストーリー。人生をかけて保護犬活動をする主人公・花井颯太を林遣都さんがみずみずしくも繊細に演じます。

「殺処分ゼロを目指す」ために奮闘する獣医学生たちのひたむきな姿は、ファッション感覚でペットを飼う人が増えている令和の時代に改めて、柔らかくも強烈なメッセージを突きつけました。

最近では、フランスで犬や猫のペットショップでの販売を禁止するという動物愛護に関する画期的な法案が可決され2024年から施行と、2021年11月20日のニュースで発信されたことも大きな話題に。

動物にも幸せに生きる権利がある。この作品が伝える切なるメッセージを多くの人に受け取ってもらいたいと願い、ご紹介していきます。

映画『犬部!』はどんな作品?


コロナ禍でおうち時間が増えたのをきっかけに増えた“ペット需要”。飼うのに、審査はいっさいなし。金銭的余裕があれば誰でも飼えてしまうのが、現在のペット事情です。

しかし、その裏側で起こっていること。犬猫の殺処分です。殺処分されている犬猫がいるのに、ペットショップではなぜ生体販売されているのでしょうか。この矛盾に、人間の業の深さが見てとれます。

犬猫に起きている現状に改めてメスをいれるのが、映画『犬部!』。「目の前の小さな命を救いたい」という一心で保護活動を続ける、あるひとりの獣医学生が繰り広げる物語です。


(C)2021『犬部!』製作委員会

青森県十和田市に、一人の変わり者がいた。花井颯太(林遣都)22歳、獣医学部の大学生。子どもの頃から大の犬好きで、一人暮らしのアパートには保護動物がぎっしり。周りからは変人扱いされても、目の前の命を救いたいという一途な想いで保護活動を続けていた。ある日颯太は、心を閉ざした一匹の実験犬を救ったことから、ひとつでも多くの命を救うため、動物保護活動をサークルにすることを思いつき「犬部」を設立。颯太と同じく犬好きの同級生・柴崎涼介(中川大志)らが仲間となり動物まみれの青春を駆け抜け、それぞれの夢に向かって羽ばたいていった。「犬部」から16年後。獣医師となっても一途に保護活動を続けていた颯太が逮捕されたという報道をうけて、開業医として、研究者として、動物愛護センター所長として、それぞれの想いで16年間動物と向き合ってきたメンバーたちが再集結するが、そこに柴崎だけがいなかった……。(C)2021『犬部!』製作委員会

※文章引用:Amazonプライムビデオ『犬部!』より

犬猫にも幸せに生きる権利を当然に持っています。しかし人間が“癒やしの存在”として普及させた結果、現実社会ではどんなことが起きているのか、映画『犬部!』は教えてくれます。

避けてはいけない問題だからこそ重苦しくなりがちなテーマです。しかし、林遣都さんや中川大志さんやその他俳優陣が、泣き笑いあふれる青春ストーリーの中で見事に表現してくれました。

フランスで犬猫を守るために動物愛護に関する法案が可決された今、全人類が見るべき作品ではないでしょうか。

※以下、ネタバレになる表現があります。未視聴の方は先を読むのをお控えください。

獣医学部の苦悩。「一殺多生」の考えからの外科実習の実態

かつての獣医学部では、生きた動物での外科実習を行うのが当たり前だったそうです。

序盤、颯太のもとに保護された犬が獣医学部から逃げてきて、教授が身元を引き取ろうとすると強く拒否するというシーンがあります。その犬は、獣医学部の外科実習で使われるため、保健所で殺処分が決まった動物です。

研究室に戻されたものの、また颯太の元に逃げてきた犬。颯太の同級生、柴崎は「外科実習は必須科目、履修しないと獣医になれない。辛いけれど必要なことだ」と言って諭します。

しかし動物の命をひとつも失いたくない颯太は、複数での動物病院での臨床手術に立ち会いレポートにまとめることを教授に提案。颯太の熱意が教授の心を動かし、分厚いレポートは受理されました。

外科実習の意義について教授が颯太に語った言葉で印象的だったのは、「一殺多生(いっせつたしょう)」。仏教用語で、多くの人を生かすためには一人を殺めることもやむを得ないといった考え方です。

私たちが当たり前に受けているサービス。それは誰かの犠牲の上で成り立っているということを改めて突きつけてくれました。新しい薬、最先端の治療法。実際に試験を受けなければその効果すらわかりません。誰がその犠牲を引き受けているのでしょうか。

颯太は、そのために目の前にいる命を犠牲にすべきではないという意志を貫きます。在学中からずっと生体を使った外科実習を反対する運動を続けました。

獣医学教育のために保健所から犬を払い下げる行為は、2005年度より禁止されています。生体を使った「外科実習」は、モデルとなった大学では2018年に禁止されました。

映画ラストのクレジットに、涙がこぼれます。“変わり者”“異端児”と揶揄された青年の動物への不快愛情が、制度をも変えたのです。

「殺処分のない世界をつくりたい」

世界を変えるのは、まっすぐな信念とあきらめない心、そして行動だと、映画は教えてくれます。動物を見つめる颯太のまなざしが、すべてを物語っていました。

いちばんつらいのは保健所職員。誰かが心を殺して命に手をかけている現状を知る

精神的にいちばんキツかったのは、やはり保健所のシーンです。

柴崎(中川大志)は、動物を愛しているからこそ環境を変えたい信念を持って、殺処分が行われいる保健所で働くために獣医師を目指します。動物の命を助けるために獣医師になる人が多いと思っていましたが、殺処分をゼロにするために獣医師になるという人がいることに、その覚悟の大きさにただただ胸を打たれました。

保健所の現状を知るだけでも、この映画を見る価値があります。保健所に運ばれてきた犬猫は、まず年齢で部屋を分けられます。老犬や障害をもった犬猫は、ガス室にいちばん近い部屋に入れられ、引き取りの対象にすらなりません。

なぜなら、引き取りを望む人の多くは若く小さな犬猫を希望するから。老犬や障害を持つ犬は、介護の大変さも加わるため、引き受ける人がいないと言います。

殺風景で冷たいコンクリートに囲まれた部屋から、さらに狭いガス室に入れられ鉄扉がガシャーンと閉まるシーン。思わず目を背けてしまう・・・。これが現実で起きているんです。

柴崎は、死が決まっている動物たちのために、野外にのびのびと遊べる環境をつくりました。最期を迎える日には大好きな食べ物を与え、できる限り寄り添って愛を伝えます。

しかし、どれだけ寄り添って環境を整えても保健所に送られてくる犬猫は後を絶たず、殺処分される犬猫がいる現状は変わりません。愛が深いがゆえに精神状態は極限まで追い詰められ、殺処分するための薬剤を自身の体に注射しようとさえしてしまいます。

その姿を見ると、殺処分をしなければならない保健所の、実際に働いていらっしゃる職員の方々に思いが巡ります。

どんな思いで毎日を過ごしているのか、どんな思いで手をかけているのか。犬猫だけじゃなく、殺処分を行わなければならない人たちもまた言葉ならない苦しさを抱えています。

アクセサリー感覚でペットを飼おうとしている人たちは、この映画を見ることを必須にしてほしいと切に感じました。

ペットショップの裏では何が起こっているのか


颯太は獣医師になり、小さな動物病院を営みます。無償で野良猫の去勢手術などを受けるなど、変わらず保護活動に精力的。食事がドッグフードだけという颯太を、看護師の深沢が理性で諭します。

そんな中、「廃業したペットショップの犬たちを助けたい」という相談が颯太に舞い込みます。相談を持ちかけてきたのは大学生の川瀬美香。かつて犬部から老犬の保護犬を引き受けた人物です。

元ペットショップにいた犬たちは、糞の始末もされていないような不衛生な環境の中で多頭飼育されていました。颯太の好意で動物病院で連れ帰って手当するものの、元ブリーダーの久米が「盗難された」と警察に通報し、大騒ぎに。

ペットショップは妻の念願だったという久米。妻が亡くなってから、犬たちを妻の姿を重ねるようになったが、多頭飼育で世話が行き届かず劣悪な環境になってしまい、お金もなく誰にも頼れない状態に。

とんだ濡れ衣を着せられた颯太は、犬たちを助けるため、めげずに久米と距離を縮めようとします。久米の家にいたのは、老犬のダックスフンド・エルサでした。子犬販売のために15回もお産をしたと颯太に話します。妻が大事にしていた犬だったから、手放したくなかったと本音を漏らしました。

颯太が久米に寄り添い、頑な心を開かせました。そして、譲渡会にまでこぎつけることができました。

どんな人にも苦しい事情はあります。だからといって、動物たちがしあわせに生きる権利を奪っていいはずがありません。

子犬のために15回もお産を強いられただなんて、セリフを聞いたときは思わず青ざめました。何の罪もない犬猫たちに負担をかけて、人間の利権のためだけにお産を強いるだなんて。当然に子犬たちとは引き離されます。

ペットショップの実態を知ると、この子たちは何のために生まれてきたのだろうと考えるきっかけになります。なぜフランスで犬猫のペットショップが販売禁止になるのか、その背景を知ってください。

あとがき

筆者は、小学生のときに一度だけハムスターを飼ったことがあります。母の友人の家で生まれたから1匹引き取ったのでした。

ゲージやひまわりの種など飼育環境を準備万端にして、はじめて家に来た日のことを思い出します。大切にお世話しようと、毎日が必死でした。動物病院にも連れていったこともあります。治療費が人間以上に高額で驚きました。

両親も責任を持って飼うと決めたから、高額な治療費を出してくれました。最期まであきらめずにお世話したことを、30年経った今でも思い出します。

迎えいれた日から「家族」なんですよね、ペットは。

犬猫は、人間の癒やしのために生きているのではありません。共に生きる大切な家族です。

日本でもフランスにならい、ペットショップでの生体販売がいつか禁止されますように。それには、颯太のような熱い信念を持ち続けて行動しなければですね。

モリスギ!も、にゃんこの保護猫活動を通じて、動物の命の大切さを訴えていきたいと思います。

◆作品情報
映画『犬部!』
公開日:2021年7月22日
出演:林遣都、中川大志、大原櫻子、浅香航大、田辺桃子、安藤玉恵、田中麗奈、酒向芳、しゅはまはるみ、岩松了 他
監督:篠原哲雄
脚本:山田あかね
原案:『北里大学獣医学部 犬部!』片野ゆか(ポプラ社刊)
主題歌:Novelblight『ライフスコール』(UNIVERSAL SIGMA / ZEST)
配給:KADOKAWA
(c)『犬部!』製作委員会
公式サイト:https://inubu-movie.jp/

※動画配信サイト
AmazonPrimeVideo

※「にゃんこのおすすめ」カテゴリの記事は、エンタメ応援と小さな命と最後まで一緒に過ごしてほしい活動の元に作成しています。

「にゃんこ」の活動について、詳しくはこちらをご覧ください。
https://morisugi.net/news/about_nyanko/

◆2021年7月7日にリリースした、にゃんこの新しいミュージックビデオ絵本。

大切な人、大切なペットを想いながら聴いてください!

<古川愛理×にゃんこから10の手紙【特別版】「いつかくること」>

◆「にゃんこ」がミュージックビデオになりました!

<Answer~ニャンダフルライフ>

◆出会えた猫ちゃんと最後まで過ごして欲しいという想いを込めた作成した、絵本の朗読動画です。

<にゃんこから10の手紙>



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